斜陽に立つ

歴史作家、古川薫氏の「斜陽に立つ」という作品を再読。 自分と同じ山口県下関市出身で、現在もその故郷に住んでおられる著者の作品は、 幕末の長州藩や戦国期の毛利家など、郷土を舞台にした歴史小説が多く、この作品も、 下関(長府)出身の陸軍大将、乃木希典の生涯を描いたものだ。 乃木が主人公の小説といえば、司馬遼太郎の「殉死」が有名である。 若い頃に読んだこの中編と、大長編である「…

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真夏の出来事

なんとなく聞いてしまった楽曲、メロディが、 ずっと頭の中でリフレインされることがないだろうか? たとえばそれが、くだらないCMの歌なんかで、思わず口ずさんだりすると、 いまいましいこと、このうえない(笑) もう倒産してしまったけど、昔「オ○ダ」というディスカウントショップがあって、 その店に行くと、「なんだ、かんだ、なんだ、かんだ、なんだ、かんだ、オ・○・ダ」ってテーマソン…

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ぜひ、用足しは然るべきところで。

自分の家は高台にある。 狭い坂道を登りきったところに造成された住宅団地の、 さらに一番奥にある。 隣の土地は空き地で、そこを奥様の駐車場として借りている。 ここの駐車場は居間から丸見えで、人の出入りがあれば、すぐにわかる。 しかし、向こう側からは、よもや人が見ているとは気づかないらしい。 日中、ほとんど誰もいないせいか、 実はここで立ちションを敢行する不届き者が跡…

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同伴者

映画が終わって、外に出た。 「腹、減ったな~」彼は大声で言う。 「おいしいパスタを食べさせてくれる店が近くにあるんだけど、行く?」私は頬笑みながら、彼に言った。 「パスタかあ・・・大盛はあるのかな?」 彼の言葉に、私は思わず吹き出した。 私たちは歩きはじめた。 今日は自然と彼の腕をとることが出来た。 五回目のデートにして、初めて・・・・。 それまでは彼のシャツの…

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追われる恐怖

幼い頃には、よく怖い夢を見た。 あまりに、連日連夜、見てしまうので、「寝るのイヤだ」と駄々をこねて、 母親を困らせたものだ。 仰臥して見る天井の木目が、いくつもの巨大な目のように思えて、いつの夜か、 その目が本当にぎょろりと動いたときもあった。 泣き叫んで、むずがって、一晩じゅう、母親の胸に顔を埋めてた。 その頃に見た怖い夢を、いまだに詳細まで覚えている。 暗…

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映画「飢餓海峡」を観る

高2のとき、両親は自分たちのことばかりで、自分の進路のことなどは二の次だった。 高3になって、離婚が決まり、自分は完全に放置されてしまった。 それから、先輩の学生や労働者の反戦運動に影響され、 東京まで過激なデモに出かけては、何度も停学処分を食らった。 そう・・そういう時代だった。 そうやって卒業しても、自分は進学も就職もしないで、バイトだけをしていた。 まあ、今で…

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助手席のひと

単身者の引っ越しの依頼を受け、ひとりで出かけた。 Y市の近郊まで、トラック一台分くらいの引越し荷物を積みに行き、わがK市まで運ぶ。 灰色の空は低く、暗鬱な国道を走る車はまばらで、目立つ渋滞はない。 3時間ほどで、目指すワンルームマンションに着いた。 数週間前、依頼の電話がかかってきたとき、年配の男性の声だったので、単身赴任のお父さんが、めでたく帰郷するのかなと思っていた。 …

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こわれてしまった一日

14年ぶりに、町内会の組長の役がまわってきた。 これで、3度目だ。 日本全国、どこでもそうだろうと思うのだが、 毎年、一世帯が持ち回りで組長を担当する。 わがN町2丁目20組は14世帯。 30年以上、ここに住んできたということになる。 市報の配達や、回覧板を作成してまわすこと以外に、 町内の清掃、会費の徴収など、けっこう、やることが多い。 町内の人の役に立ちたいというボランテ…

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たそがれの10月

「10月は黄昏の国」という本のタイトルを、この季節になると、決まって思い出す。 レイ・ブラッドベリという、アメリカのSF作家の手になる作品集だが、 高校生のとき、創元推理文庫で読んだきり、すっかりその内容は忘れてしまっている。 なのに、この印象深いタイトルは、いつも胸の中に刻み付けられていて、 毎年10月の暦をめくると、鮮烈に、自分の全身を覆ってしまうのだ。 今年、自分は還暦を…

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